障がいのある方と働く喜びをわかちあい、未来を動かす「キャンバスの会」|宮崎県都城市ふるさと納税特設サイト

障がいのある方と働く喜びをわかちあい、未来を動かす「キャンバスの会」

 働き方が問われるいま、あなたは“働く”とはどういうことか考えたことはありますか? 収入を得る手段であることに間違いはないのですが、それだけではないのも確かです。自分の働きが誰かの役に立っていると実感できれば、喜びになります。働くことで人とのかかわりが増えれば、やがて大事な友ができたり、新しい楽しみに出会ることがあるかもしれません。

 そのための“場”を提供しているのが「キャンバスの会」です。ここでは、障がいのある方がスタッフのみなさんと一緒に、地域社会のなかで自分の力を生かせる仕事に取り組んでいます。

 

【働くことは生きること。だからこそ“働く場”が必要】

 「キャンバスの会」が展開する事業は、広範囲におよびます。お弁当づくりや配食サービス、レストランでのサービス業務、リネンのクリーニング、おむつの宅配、野菜や総菜、酒類の販売など、実にさまざま。地域のニーズと働く方々の要望にあわせて、事業を拡大していったといいます。こうした事業の一つにふるさと納税を取り入れ、焼酎の梱包、配送作業をおこなっています。

 

 事務局の小口純平さんは、2017年4月に東京からのIターンで、ここ都城にやってきました。奥様がえびの市ご出身だったこともあって、宮崎県には親近感があったとか。
「住んでみて、都城のよさを実感しています。食べ物はおいしいし、焼酎はうまい。すぐそばには温泉もある。ここでの暮らしが気に入っています」
 と、都城での生活に大満足の様子です。

 小口さんは東京で、放課後等デイサービスの仕事に従事していました。放課後等デイサービスとは、障がいのある子どもたちが放課後に利用する施設のこと。ここで、小学生から高校生までの子どもたちとかかわってきました。

「小学校入学から高校卒業までの時間は12年。長いように思うかもしれませんが、人生は学校を卒業してからのほうがずっと長い。その長い人生を働きながら過ごしていかなければいけないわけです。働くって、やっぱり大事ですよね。楽しいこともあれば、厳しいこともたくさんある。そのなかで、私たちがどうかかわっていくのか。ここにきて、勉強しなければならないことが、たくさんあると感じています」

 

【利用者の方々と心をかよわせ、真摯に向き合いたい】

 取材におじゃましたのは1月下旬。冷たい風が吹きつける寒い午後でした。そんな日にもかかわらず、屋外では利用者の方々が里イモの土をはらい、親イモと子イモを切り離す作業を進めていました。午前中にはゴボウの処理を終わらせていたそうです。こうしてキレイに整えられた野菜は、販売所に持って行ったり、総菜づくりの工場に運び、加工品の材料となります。

 黙々と手を動かし、作業を続けるみなさん。寒くても、文句ひとつ言わずに真面目に働く姿に、胸を打たれます。

「私自身は、利用者の方と直接かかわる機会が少ない部署にいるのですが、今後は増えてくるはず。ここを利用する多くの方が私より年上ですから、前職の環境とはまったく違います。だからこそ失敗をおそれず、むしろ失敗を前提に利用者の方々とかかわっていくしかないと思っています。もしも失敗したら、自分の何が悪かったのかを考えて、そこを改善する。真摯に向き合っていくしかありません」
 小口さんのまっすぐな口調に、誠意がにじみます。

 

【すべての始まりは、理事長の「娘を想う親心」】

「キャンバスの会」が生まれたのは、2007年のこと。理事長の楠元洋子さんが、重症心身障がいを持つ娘さんのために、会を立ち上げたことに始まります。

「親が逝ったあとも、わが子が安心して暮らせる場所をつくりたい」
そんな親心が、きっかけでした。いまでは就労施設だけでなく、生活の自立をサポートするグループホームや、医療ケアが必要な方のための施設など、宮崎県内に18の事業所を構えます。

 

「娘のためにやっていることが、ほかの方にも役立つのであれば、こんなに嬉しいことはありません。私にとって助けになると思うことは、きっと、同じ立場のママさんたちにも喜ばれるに違いない。一人はみんなのために、みんなは一人のために。そんな想いから一つずつ、夢を叶えてきました」
 と、理事長の楠元さんは言います。障がいを持つ娘さんの育児をしながら、組織を立ち上げ、ニーズに応えて事業を拡大してきました。

「いまの目標は、医療つき入所施設をつくること」
 と語る楠元さん。その想いをカタチにするため、賛同してくれる医師のもとに駆けつけたり、講演で自らの体験を語ったり。睡眠時間をけずって全国を飛び回っています。

「年だから、疲れちゃって……」
 と言いながら、夢を語る瞳は輝いていて、実に若々しい。本当にステキな方です。

 

【「みんなのいのち」が輝くことを、みんなで考える】

 施設の運営に加え、楠元さんが力を入れているのが、「輝けみんなのいのち」と題したセミナーです。小口さんもその運営スタッフとして、尽力されています。このセミナーは重症心身障がい児(者)とご家族が、いま抱える悩みをみんなで共有し、支援方法を考え、解決をめざすというもの。誰でも参加できるようにとの配慮から、参加無料で年に6回、開催しています。

 

「毎回、多くのお客様がいらっしゃるので緊張しますが、たくさんの方に喜んでいただけるので、うれしく思っています。あんなに頑張っている理事長を前に、『疲れた』なんて絶対に言えませんから、ひたすら頑張るのみ。何をするにしても、利用者さんの幸せにつながることを最優先に考えていきたいと思っています」
 と、どこまでも誠実な小口さん。

 利用者みなさんへの思いやりに溢れています。働くことをつうじてつながる人の縁は、やっぱり素晴らしい。「キャンバスの会」を支えるみなさんのぬくもりに触れ、私も頑張ろうと心が奮い立つのを感じました。

 

〈編集部コメント〉

母として強い信念を持ち、娘さんの障がいを受け止める楠元さん。娘さんのために、いつも笑顔で前を向いて走りつづける。その陰にはどれほどのご苦労があっただろうかと、考えるだけで胸がいっぱいになります。そして楠元さんの生き方に共鳴して、小口さんのような若い人材がやってくる。人の役に立つことを生き甲斐として、誠実に相手と向き合う姿にもまた、心がゆさぶられます。働き方は、生き方でもある。そう強く感じました。

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