独自のシステムでスマート農業を実現。生産・青果業・6次化、ショップも展開し新しい農業のカタチをつくる「有限会社 新福青果」|宮崎県都城市ふるさと納税特設サイト

独自のシステムでスマート農業を実現。生産・青果業・6次化、ショップも展開し新しい農業のカタチをつくる「有限会社 新福青果」

 農作物をつくる「生産法人」であると同時に、契約農家がつくった作物を仕入れて販売する「青果業」も営む「有限会社 新福青果(しんぷくせいか)」(以下:新福青果)。現在、3代目となる代表取締役・新福 朗(あきら)さんと、朗さんの奥様で広報企画・ベジタブルプロモーターの安希恵さんが新しい農業のカタチを模索しながら、さまざまなチャレンジを行なっています。その取り組みは高く評価され、経済産業省から「地域未来牽引企業」や「IT経営百選優秀賞企業」に選定されているほか、全国商工会連合会による「IT経営大賞優秀賞」も受賞しています。その成長の軌跡、見据える未来について伺いました。

 

農業をスマートに!
その第一ステージは父・秀秋さんによる
法人化とIT導入

「新福青果」の歴史は、和牛と露地野菜の農家だった朗さんのお祖父さんから始まります。

朗さん:祖父は面倒見のいい性格で、市場にも顔が効いたことから近所の農家さんがつくり過ぎて行き場がなくなっていた野菜を買い取り、販売していたと聞いています。つまり、新福家は祖父の時代から “農家”と“青果業”の二刀流でした。祖父の後は名古屋の化学研究所に勤めていた父が都城に戻って後継者となり、昭和60年に畜産をやめて野菜の生産に特化。スタッフがしっかりと休日をとれて、安心して働ける環境を整えるべく昭和60年に法人化、平成7年に農業生産法人に組織改定しました。いまでこそ農業生産法人は珍しくありませんが、今から約30年前の設立なので当時としてはパイオニアだったと思いますね。父は農業のIT化にも積極的で、土中の温度や水分量を計測するフィールドサーバーや、スタッフの労働状況を管理するシステムなど、スマート農業をいち早く導入していました。非常に先見の明があったと思うのですが、当時は何のデータが必要なのかを精査できていなかったり、現場がIT化についていけなくてなかなかうまくいかなかったようです。

時代を先取りした実験的な試みはすぐに成果を出すまでには至らなかったものの、父・秀秋さんが蒔いた種は、朗さんの時代に実を結ぶことになるのです。

 

農業に無関心だった少年が
いつしかスマート農業の最前線へ

現在、経営者として手腕を振るう朗さんですが、高校時代はまったくその気がなく「絶対都城には帰らない!福岡に進学し、東京で就職する!」と宣言し、有言実行。

朗さん:東京の不動産商社で働いていました。資格も取得して仕事が面白くなっていた頃、父が上京し、美味しい焼肉を奢ってもらった後に〈明日から帰ってこい!〉と言われました(笑)。あまりに急な話だったので断ったんですが、半年後には〈帰ってこなくてもいいからこの会社で働け!〉と(笑)。とうとう根負けしました。

転職先となった「富士通」は父・秀秋さんが農業ソリューションを導入していた企業。秀秋さんは自社内でもその道に長けた人材を育成すべく朗さんに白羽の矢をたてたのでした。

朗さん:ITの知識はまったくなかったので最初は苦労しましたが、不動産商社にしても富士通にしても、農業を俯瞰して見る視点を与えてもらいました。

そうして29歳になった時、東京で得た知見をこれからの農業に活かすべく都城に帰郷。1年間、畑での現場経験を経て2年目からは秀秋さんと共に経営に携わるように。秀秋さんが65歳になったタイミングでリタイアすることになり、朗さんが社長に就任しました。

 

データを収集・整理・活用して
ドラスティックな事業効率化を実現

「新福青果」にはスタッフの労働時間やその内容、農業機械の使用状況、仕入れや売上など、社内のすべてのデータを一元化し、営業資料や経理、会議資料などに活用する「ICT推進チーム」があります。

朗さん:ICT推進チームは社内のハブ的存在ですね。一般的にシステム導入には多額のコストがかかりますが、現場で必要なことを実現していくためには、既存のものでは対応できなかった。そこでSEを雇用し、自分たちが一番使いやすく無駄のないシステムを構築しました。これにより、ひとつの畑で収穫した作物に対する経費が明確になったほか、事務作業にかかる時間も大幅に短縮、ペーパーレス化も実現しました。

このほか、朗さんは過去の販売データも分析して生産品目を絞ったり、買い手主導になっていた取引先を整理するなど、事業の効率化をドラスティックに進めていきました。また、現在40軒弱ある契約農家とは毎年研修会を行うなど密に連携し、さらなる品質の向上に努めています。何より農家に喜ばれているのは「買い取った野菜は返品しない」「相場に左右されず一定金額で買い取る」という方針。

朗さん:農家さんとの絆は大切。安心して“つくること”に専念してもらい、質・量ともにいい野菜を提供してもらいたいと考えています。素晴らしいことに主力商品のサツマイモの農家さんにはすべて後継者もいらっしゃる。今後も末永く共存共栄を目指していきたいですね。

 

海外展開を視野に入れた6次化商品の開発
目標は「農業のステータスを上げること」

サツマイモを使った商品開発や焼き芋専門店「waimooimo(ワイモオイモ)」(※)をマネージメントしているのが朗さんの妻・安希恵さんです。

安希恵さん:コンセプトは“Farm to Table”。長期熟成させたさつまいもを使った焼き芋や、芋スイーツを展開しています。すべて手づくりなので少量生産ですが、大事に育てていきたい。特に都城産の紅はるかを使った焼き芋フライドポテトはシンガポールや香港の出張イベントでも大好評でした。今後は海外での展開も視野に入れています。直営店を展開したことで、まずは経営の第1ステップが叶えられたと考えています。今後の目標は農業のステータスを上げること。農業経験ゼロでもチャレンジできて、スタッフが安心して豊かな人生を送れるような会社にしていきたいですね。また、日本の農業の流通の仕組みを変えていくことにも取り組みたい。市場とJAの境界線をなくし、生産拠点をITで結んで地域による価格差も解消したい。そうすることで生産者さんの暮らしも安定するし、消費者にとってもメリットが大きくなると思うんです。

すでにその実現化に向けて歩き始めている朗さん。慣習に縛られない柔らかな発想とスピーディでタフな実行力を備えた「新福青果」が日本の農業を変えるかも!そんな明るい予感がします。

※都城弁で「あなたもわたしも」の意

 

 

 

<編集部コメント>

農業界に新風を吹き込む「新福青果」。先鋭的な取り組みが評価されていますが、その原動力となっているのは「農業に携わる人を幸せにしたい」という朗さんの想い。大きな夢に向かって突き進む情熱的な経営者夫妻にエールを送りたい!と心から思う取材となりました(N)

 

 

現在の主力商品はさつまいも。農家から大量に仕入れられたさつまいもは規格選別の機械を導入した「新福青果」で仕分けされ、商品化される。こうして農家の作業負担を減らしたことで生産量、売上高も増加。さつまいもは有名コンビニエンスストアの焼き芋にも使われている

 

家業を継いだ時から興味を持っていたオランダの青果販売企業「グリナリーインターナショナル」を農林水産省の職員と共に視察。この経験が「日本の農業を変えたい!」と強く考えるきっかけとなった

 

「waimooimo」で人気のスイートポテト。さつまいも、甜菜糖、バターのみを使用。保存料などは使っていない。現在、豆乳と甜菜糖、さつまいもだけを使ったアレルギー対応タイプも開発中

 

取材スタッフ絶賛の「焼き芋まるごとおせんべい」。甘みとほろ苦さが同居し、お茶にもお酒にも合う!

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