亡き夫の想いを受け継ぎ 自社芋100%の焼酎を完成「コウワ」|宮崎県都城市ふるさと納税特設サイト

亡き夫の想いを受け継ぎ 自社芋100%の焼酎を完成「コウワ」

約35町(1町=約10,000㎡)という広大な耕地で、芋や野菜などを栽培する農業生産法人「有限会社コウワ」。その会長を務めているのが田中永子さんです。26歳で大工だったご主人・耕太郎さんと結婚。その後、実家の農家を継ぐことになった耕太郎さんとともに長年農業に携わり、会社を大きく成長させてきました。ご主人の逝去後は遺志を受け継ぎ、自社でつくった芋を100%使った焼酎「しるくすい〜と」を完成。現在、ふるさと納税返礼品として提供しています。彼女が歩いできた道のり、そしてこれからについて伺ってみました。

 

思いがけず
大工の嫁から農家の嫁に

 「大工のお嫁さんになると思っていたので、まさか農業をやることになるとは思っていなかったんです(笑)」と永子さん。嫁ぎ先は義父が会社員という兼業農家だったため、永子さんは農家に嫁いだという感覚がなく、農業を営む義母を気軽な気持ちで手伝っていたのだとか。「当時は家の裏で豚を飼っていて、朝と夕方に餌をあげればいい程度のお手伝いしかしていませんでした。夫も大工の仕事が好きで、いい家をたくさんつくって棟梁として活躍していたんですよ。でも、35歳の頃、腰を悪くしてしまって…。ちょうどその頃、輸入木材が盛んになって景気が悪くなったこともあり、夫が農業を継ぐことを決意したんです。義父も亡くなり、義母と夫、私の三人で専業農家としてスタートしました」。

 

勉強家でアイデアマンの
ご主人により農家から法人へ

 農業経験のないご主人と義母、永子さんの3人で専業農家としてスタートをきった田中家。農業経験のない若夫婦と義母での毎日はさぞかし大変だったのでは?「畑をすべて手作業で行なっていた頃は本当に大変でしたが、夫がアイデアマンでいち早く農業機械を導入してくれたんです。ある日、いきなり実演機(車でいうところの試乗車)を持ってきて、私に“運転してみろ”って言うの(笑)。それで気に入ったら即決しちゃって。収穫のための機械と、袋詰めまでできる機械を2台導入してくれたから、少人数でもなんとかやっていくことができたんです。大工だった経験を生かして、暑い時期にも作業しやすいようにと機械の上に屋根をつけてくれたりしてね。それが他の農家からもいいね!となって、頼まれてつけてあげたりもしていましたよ」。耕太郎さんは農業の知識を得るために必死で勉強する努力家で、新しい機械があると聞けばすぐに見に行く好奇心旺盛な性格だったとか。そんなご主人を中心に、田中家は農家として順調に成長を続け、2003年に法人化。農業生産法人「有限会社コウワ」となりました。

 

あの有名焼酎の芋も
ここから始まった

 「コウワ」が生産しているのは8割がサツマイモ。サツマイモの収穫が終わる11月頃からはジャガイモや人参、大根、里芋、ほうれん草などを二毛作としてつくっています。特に忙しいのは8〜11月の芋の収穫期。収穫した芋のほとんどは「霧島酒造」に納品しています。なんと、多い日は大型トラックで4回も往復するのだとか。「霧島酒造さんはご紹介を受けてお取引が始まりました。夫が研究熱心で、土づくりなどにも独自のやり方を取り入れていたので、“先生”と呼んでくださる方もいらして。そんな方からのご紹介でした」。人望も厚かった耕太郎さん。その独自のセオリーを学ぼうと、「コウワ」には大型バスで人々が集い、講演会なども行われたとか。
 実は、霧島酒造の人気焼酎「赤霧島」に使われているムラサキマサリも、「茜霧島」に使われているタマアカネも、一番最初に育てたのは「コウワ」。ここで培われたノウハウが各農家に広まり、本格的に生産されるようになったそうです。

 

夫の遺志を叶えたい!
その想いで「しるくすい〜と」が誕生

 二人三脚で歩いてきた田中さんご夫妻でしたが、7年前に耕太郎さんが他界。永子さんが会長に、息子さんが社長に就任しました。「夫は誰よりも朝早く起きて、人の何倍も働いていました。朝は3時くらいにトラクターに乗って、畑に行ってましたね。真面目で、勉強熱心で、焼酎が好きな人でした。夫は生前「自分がつくった芋だけでつくられた焼酎を飲みたい!」と、酒造さんと一緒に焼酎の開発を進めていましたが、その完成を待たずして逝ってしまって…。それで私がその遺志を引き継いで、完成へとこぎつけたんです。それが今、ふるさと納税の返礼品として出している焼酎「しるくすい〜と」。主人が遺してくれた焼酎をこれからもっとたくさんの人に飲んでいただくのが私の夢です」と永子さん。自社栽培の「シルクスイート」100%で作られた焼酎は、フルーツのような華やかな香りと、女性でも飲みやすいまろやかな味わいが特徴。毎年3,000本限定生産のプレミア焼酎として、徐々に人気が高まっています。1本の焼酎に込められた夫婦愛。その物語を感じながらいただくと、より一層美味しく感じられそうです。

 

 

<編集部コメント>

ご主人・耕太郎さんのお話をされる時の永子さんの表情といったら本当に可愛く、今も深いご主人への愛情が伝わってきました。その美しいストーリーには心洗われるような気持ちに。本当にありがとうございました!(N)

 


ライ麦やえん麦などの緑肥を使って雑草を防ぎ、豊かな土壌をつくっている「コウワ」の畑。丸々とした大きな芋が収穫されていました

 


10年程前のお写真。右がご主人の耕太郎さん、左が永子さん。おしどり夫婦として「コウワ」を成長させてきました

 


事務所では、霧島酒造の焼酎のほか、「しるくすいーと」などの販売も行なっています

 


1袋は約500kg!繁忙期は霧島酒造と会社をトラックで何度も往復し、採れたての芋を納品しています

 


天孫降臨伝説が残る高千穂峰に見守られた「コウワ」の畑。冬の間は大根や人参などの生産が行われています

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