都城から世界へ。安全と安心の農業を牽引する「アウル」|宮崎県都城市ふるさと納税特設サイト

都城から世界へ。安全と安心の農業を牽引する「アウル」

山あいに広がるのどかな田園地帯のなかに、アウルの田畑はあります。アウルは、藤井省三さん、真知子さんご夫婦と長男の一生さんによる
家族経営の農業法人。真知子さんと一生さんにお話を伺うと、これまでの家族経営の農業のイメージを覆す、世界的な視点に立ったお話でした。

安全で、おいしい。それは、日本でも、世界でも、共通して求められる“食”の基準。このポイントをしっかりと押さえていれば、視界はおのずと拓けていく。
自然にめぐまれたここ都城で、食の安全性を追究するアウルのチャレンジは、農業の未来を明るく照らす道しるべのようでした。

 

【ご縁がつないだ世界へのトビラ】

 

    

海外とのご縁ができたのは、いまから20年ほど前のこと。ホームステイのために、香港から来日した20歳の女性を迎えたことにはじまります。
「ホストファミリー募集の話を聞いたとき、なぜか『チャンス!』って思ったんです」
この真知子さんの直感は、やがて現実のものになります。ホームステイの期間は2週間。その間、一緒に畑仕事で汗を流し、家族のような関係になれたと
いいます。

「日本のお米はおいしいって、喜んでくれて……。その後、彼女から、香港でアウルのお米を売りたいというお話をいただいたんです」

 

 

アウルが丹精を込めて育てた独自ブランド「ひかりの穂」。これを1キロずつ真空パックにして、香港へ輸出することになりました。パッケージのデザインは、
香港の彼女が担当。当時の香港では、まだ日本米が珍しく、人気を集めます。新しいビジネスが、こうしてはじまりました。

その間も、毎年のようにホームステイの受け入れを続けてきました。2000年に受け入れたアメリカの青年は、その後、藤井家のご長女と結婚。娘さんは、
現在、アメリカに住んでいます。

「飛行機に乗れば、わずか24時間で娘に会える。あっという間ですよ。毎日のようにSNSで写真も届くしね」
 真知子さんにとって、世界はずっと身近な存在になったようです。

 

 

ホストファミリーをはじめた当時は、小学生だったご長男の一生さん。いまでは、頼れるアウルの後継者です。

「母のおかげで、いまがある。すごい人ですよ」と、お母様の行動力を静かに分析します。

 

【チャンスをつかんで、新しい時代へ】

 

 

真知子さんのチャレンジは、まだまだ止まりません。
その一つが、“よい農場の目印”といわれる「JGAP」の認証取得です。JGAPとは、農作物の安全と農場の環境保全への取り組みを客観的に評価する
認証制度のこと。120項目もの基準をクリアしなければなりません。

2020年、東京五輪・パラリンピックの選手村では、JGAPの認証を得た食材しか使えないとあって、農水省も導入をすすめています。けれども、ハードルが高く、
なかなか認証農場が増えないといいます。事実、宮崎県内でJGAPを取得しているのは、数が少なく、穀物と青果、2ジャンルでの認証
を取得しているのは、アウルと宮崎大学の2つだけです。

 

「JGAPのお話を聞いたとき、またしても『チャンス!』と思ったのです。正直にいうと、JGAPは高嶺の花だと思っていました。しかし、指導員の方がいて、
教えてもらえるという環境が与えられた。これは、本当にありがたいことでした」
 真知子さんは、分厚い資料を何度も読んで勉強し、農場の管理に反映させていきました。

 

【努力を積み重ね、「JGAP」と「JAS」の認証を獲得】

 

 

 「昼は農作業。夜は勉強。子育てが終わって、時間はたっぷりありますから」
 と、こともなげに言ってのける真知子さん。
 JGAP認証取得までの道のりは、決して、平坦ではなかったはずです。実際、取得をめざしたものの、道半ばで断念する農家さんが、大勢います。
仕事をしながらの勉強は、過酷そのもの。それでも、真知子さんは諦めなかった。そのエネルギーの源はどこにあるのでしょう。

「苦労は、すぐに忘れちゃうんです。それより、チャンスはつかんだほうが、かっこいいでしょ」
 と笑う真知子さん。かっこよすぎます!

 

さらに、有機栽培の認証資格「JAS」も取得。アウルがつくる農作物は安全であり、環境に配慮した農場経営ができている。そんな数々のお墨付きを得ているのです。

「次は、ASIAGAPの認証の取得に向けて1月に審査を受けます。」
 ASIAGAPは、JGAPより細則になっており、その安全性を高める取り組みにも意欲を燃やします。その尽きることのない向上心には、感服です。

 

【チャレンジで新しい可能性を拓く】

 

 

新しい取り組みは、もう一つ。1本の畦で、年に2回の作物を栽培する「畦連続使用栽培システム」の開発にも取り組んでいます。大根を育てた畦で、
大根の収穫後にサツマイモを育てる。これは、「九州沖縄農業研究センター」と一緒に研究している取り組みになります。有機栽培のため、肥料は焼酎の廃液。
これまで4年間の成果は、専門書にも取り上げられました。

 「私は非農家から嫁ぎました。そのため、『こうでなければならない』というこだわりがなかった。だから新しいことにチャレンジしやすかったのかもしれません」
 新しい世界に飛び込んだときの勢いそのままに、真知子さんは進化を続けています。

 

【家族の絆で、夢を現実に】

 

 

藤井家は、4代つづく農家のお家柄。5代目を任されているのが、息子の一生さんです。小学校の卒業文集にも「将来は農業をする」と書いていたといいます。
ぼんやりと思い描いていた未来を現実のものにしていくときが、目の前に迫っています。

「実は、新しいことを考えているんです」
 真知子さんとはまた違ったアプローチで、農業と向き合う一生さん。地域を変える新しい可能性が、芽生えはじめています。

 

 

そんなお二人を包み込む大きな懐を持つのが、お父様の省三さんです。取材のこの日も、省三さんは農作業。ものづくりが大好きだという省三さんは、
メカニックに強く、農機の修理もお手のもの。

 この三人が力を合わせて耕すアウルの未来。大きな実りを予感させます。

 

〈編集部コメント〉

社名の「アウル」とは、フクロウのこと。苦労がないように。その想いで名付けたといいます。ご両親から一生さんへのステキなメッセージです。
 どれほど社会が発達しても、私たちの食を支える第一次産業は、世の中に欠かせない存在です。一方で、社会や環境の変化に影響されやすく、多くの苦難を強いられています。そのなかでチャレンジをつづける真知子さんの生き方は、本当にかっこいい。つねに前を向いて、新しい世界のトビラをたたく。その姿勢に、大きな感動と刺激をいただきました。

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