家族でおいしさを守り、伝える都城産黒豚「豚ぷきん」|宮崎県都城市ふるさと納税特設サイト

家族でおいしさを守り、伝える都城産黒豚「豚ぷきん」

 「豚ぷきん(とんぷきん)」という愛嬌たっぷりのブランド名に、心をつかまれます。由来は、「豚」と「パンプキン」。その名のとおり、エサにカボチャを使って育てられた豚肉です。
 それにしても、豚とカボチャとは、意外な組み合わせ。商品化が成功するまでの道のりには、多くの試練がありました。それでも前へ進めたのは、黒豚直売所「豚ぷきん」店長、清藤奈々子さんの強い想いがあったからです。

 「このおいしい豚肉を、たくさんの人に食べてほしい」
 そんな奈々子さんの情熱が実を結んだ背景には、養豚業を営むご主人とご家族の存在がありました。

 

【黒豚のおいしさに魅了され、養豚の世界へ】

「こんなにおいしい豚肉を食べたのは、生まれてはじめて!」
 奈々子さんが感動したのは、両家顔合わせの席でした。養豚業を営む夫、清藤家は、農場の黒豚を一頭さばいて、ふるまってくれました。そのおいしさといったら。奈々子さんは心の底から感激したといいます。

 結婚後、3人の子どもにも恵まれ、母親業に専念していましたが、ある日、飼育転換の話を耳にします。
 当時、ご主人、智行さんの農場では、一貫して黒豚を育てていました。しかし、周りの環境が変化し、黒豚ではなく、白豚に変更すべきとの話が持ち上がったのです。一度、黒豚の生産をやめてしまうと、再開するのは難しい。その話にいちばん動揺したのは、奈々子さんでした。

「黒豚の飼育は、絶対にやめてほしくない」
 強い想いの原点は、嫁ぐと決めた日に食べた、あの黒豚の味にありました。
 鹿児島の黒豚だけがおいしいわけじゃない。都城産のおいしさを多くの人に伝えたい。
 だからこそ、何としてでも黒豚の飼育は続けたい。その願いが通じて、少しだけ黒豚を残すことができたのです。

 

【都城育ちの黒豚「豚ぷきん」、誕生】

 奈々子さんはご主人と、黒豚のブランド化に取り組みました。
まず考えたのが、エサです。エサの違いで、肉質にどのような変化があらわれるのか。キュウリ、トマト、スイカ……。思いつくままにいろいろ試してみたものの、これといった成果が上がりません。ところが、養豚場の横の畑でできたカボチャを与えてみたところ、豚の食いつきもよく、肉質に変化が出たのだといいます。

「脂がほんのりと甘く、肉の色も濃く美しい。しかも肉にサシが入ったのです」

 エサは、カボチャに決まりました。しかし、与える量が多すぎては、脂身が黄色くなってしまう。試行錯誤のなかで適量を編み出しました。

 

 農場の隣にあるカボチャ畑には、豚舎の糞尿でつくった堆肥を使っています。自然のサイクルをそのまま利用した栽培法なら、化学肥料を一切使うことなく、たわわに実がなるのだとか。こうして育てた自家栽培のカボチャを豚に与えています。

 そして生まれたのが、「豚ぷきん」です。このおいしさを直接、多くのお客様に伝えるため、奈々子さんは直売所の経営をはじめます。

 

【おいしさを食卓にお届けする。直売所がスタート】

「夫が大事に育てた豚を販売するわけですから、それを大切に扱わないといけない。その豚が生まれた瞬間から知っていますしね。命をいただく。その意味を忘れてはいけないと思います」

 ご主人の智行さんは、豚オタク。奈々子さんはそういいます。愛情を込めて育てられた命だからこそ、手をかけ、愛情をかけて、お客様にお届けする。その使命を感じて、お店に立ちます。

 

 肉のスライスにもこだわります。見た目はもちろん、おいしさを味わってほしいとの配慮から、余分な脂身はていねいに切り落とします。肉への愛情が伝わる仕事ぶりです。

 コロッケ「とんころ」やミンチカツの販売もはじめました。さすがはお肉屋さん。肉のおいしさが違います。肉の風味が強く、うま味が濃い。箸を入れると、ミンチカツからは肉汁があふれだします。

 

 イベントにも積極的に参加しました。炭火でスペアリブを焼いたり、コロッケやロールカツをふるまったり。努力を重ねた結果、「豚ぷきん」の名は、少しずつ地域に浸透していきました。口コミで、その肉質のよさや総菜のおいしさが伝わっていったのです。おかげで、店舗の客足も少しずつ増えていきました。

「イベントは、土日がほとんど。その間、子どもたちの世話や家事は、夫に任せることが多くなりました。我が家の夜ごはんをつくるのは、夫なんです。本当に感謝しています」

 
【二足のわらじで、全力疾走】

「豚ぷきん」のために、日々奔走する奈々子さんには、もう一つ、力を注ぐものがありました。それは、バレエ。3歳から18歳までバレエを続けていたといいます。進学を機に少し中断したものの、24歳から再び、躍り続けていました。そんな奈々子さんに、バレエ教室主宰の話が持ち上がったのです。

「たまたま出店と同時期に、バレエ教室のお話もいただきました。スポーツクラブのなかの小さな教室。ここでならバレエの楽しさが伝えられると思い、お引き受けしました」

 昼は農場やお店で「豚ぷきん」にかかわり、夜はバレエ教室の先生になる。二足のわらじを履いて、4年になります。伸びやかな手足や美しい立ち姿は、まさにバレリーナ。このギャップが、本当にステキです。

 

「夫の理解と家族の協力があるからこそ、バレエもお店も頑張れる。応援してくれるわが子にも、本当に感謝しています」

 ご家族との深い信頼関係が、奈々子さんを支えています。愛情を伝える。感謝を届ける。身近な人になればなるほど伝えにくい気持ちを素直に伝える奈々子さんの姿に、大切なことを教えてもらった気がします。

 

〈編集部コメント〉

 自分の信じた道をまっすぐに突き進む奈々子さん。その強さの裏には、ご家族との深い絆があります。妻であり、母であり、養豚家であり、経営者であり、バレエの先生でもある。ひとりで5役をこなすそのチャレンジに、女性が持つ可能性の大きさを改めて感じました。
 「豚ぷきん」を食べてみて、あまりのおいしさに感動。奈々子さんの頑張りは、確実に、カタチとなっています。

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