おいしい卵は健康なニワトリから。鶏糞で無農薬米もつくる「恵農場」|宮崎県都城市ふるさと納税特設サイト

おいしい卵は健康なニワトリから。鶏糞で無農薬米もつくる「恵農場」

 山に向かって蛇行しながら続く坂道の途中に、恵農場はありました。農村のたたずまいを残す昔ながらの風景に鶏舎がとけ込んで、はじめて訪れるのにどこか懐かしい風情を感じます。

 ニワトリがいれば、当然、聞こえてくると思っていた「コケコッコー」の声が、まったく聞こえません。疑問に思い、恵農場の代表、川畑耕一郎さんにお尋ねしました。
「そりゃ、そうですよ。ここにいるのは、メスだけですから。鳴くのは、オスですよ」
 そうですね……。バカなことを聞いてしまいました。でも、そんな勘違いをしてしまうほど、私たちの日常にニワトリの姿はありません。昔はどこの家でもニワトリを飼っていたり、小学校で飼育していたり。多くのまちから消えてしまった日本の原風景が、ここにはありました。

 

【ヒヨコから大事に育てて、親鳥へ】

 取材にうかがったこの日は、ヒヨコが入荷したばかり。早速、ヒヨコ舎に連れて行っていただきました。

 生後2日のヒヨコが2500羽。ピヨピヨとにぎやかです。恵農場では、純国産のヒヨコを岐阜県から仕入れています。実は、国産鶏から産まれる卵は、市場に出ている卵のわずか5%程度。ほとんどが、輸入鶏の卵なんです。「日本の食を守るためには、国産鶏の飼育が重要だ」と、川畑さんは言います。

 生後130日ごろになると、卵を産みはじめます。白いニワトリは白い卵を、褐色のニワトリは褐色の卵を産みます。川畑さんのように、ヒヨコから育てて養鶏をする農家は、全国でも珍しいといいます。

 

 成鶏になると、1日に約1つ、1週間に6つの卵を産みます。
 「卵を産むと、『いま産んだよ』という鳴き方をするから、わかりますよ」
 と、川畑さん。さすが、この道40年を超えるベテランは違います。

 

【エサが健康をつくり、おいしい卵を育む】

  エサで卵の質が変わる。川畑さんは長年の経験で、そう実感しています。ニワトリのエサは、毎日、手作業で配合。トウモロコシを中心に、カルシウムを補う牡蠣ガラ、タンパク源となる魚粉や大豆カスなど、13種類をブレンドしています。なかでもこだわりは、アスタキサンチンを含むファフィア酵母。アスタキサンチンとは、サケやエビに含まれる赤色の天然色素で、抗酸化作用が強いといいます。天然素材のため高価なものですが、エサに加えてからはニワトリが病気にかかりにくくなったそうです。

 

「どんなエサを、どのような配合で与えるといいのか。それは、実際にやってみないとわかりません。長い時間をかけて、いろいろ試して、ようやくいまの形に落ち着いた。鶏にあうエサができたときには、うれしかったですよ。鶏が順調に卵を産むのも、エサのおかげ。卵の状態やカラの色からも、健康状態がわかります」

 恵農場のニワトリ約2万羽が食べるエサは、1日およそ2トン。鮮度を保つため、毎朝、機械でエサをブレンドしています。2トンの量となると、なかなかの重労働です。しかも、成長過程にあわせて配合も調整。気温によって体調も変化するため、年に4回、エサの配合を変え、健康管理には神経を使っています。すべては、川畑さんの経験に基づく成果。長年、命と向き合ってきた時間の重みを感じます。

 こうして、大切に育てられた親鶏から産まれた卵は、「高崎のめぐみ」というブランド名で出荷されています。

 

【鶏糞で稲をつくる循環型農業を実践】

 さらに恵農場では、ニワトリの糞を堆肥にして、米づくりもおこなっています。鶏糞があれば、水と最低限の除草でおいしいお米ができるんだとか。完全循環型の農業です。

 

 そんな川畑さんを支えるのは、奥様の惠美子さんと三男の一也さんです。恵農場のお米「自然米」のPRのため、新米の時期には宮崎市内のスーパーで炊き出しをした惠美子さん。おにぎりと一緒に、おばあちゃんお手製の漬物をふるまい、お客様に試食してもらいました。ふっくらとつやつやなお米は評判になり、昨シーズンには10トンすべて完売。今シーズンのお米も、上々のできばえです。

 「実家は牛の飼育と園芸の複合農家でしたが、私自身は勤めに出ていたので、農業経験はありませんでした。まさか、農家の嫁になるとは、思ってなかったんですがね」
 そう語るやさしい笑顔の惠美子さんは、野菜も栽培。ペットとして“シャモ”も飼っています。
「野菜も動物も、育て方で一生が決まる。病気にならないように世話をして、健康を守ってやりたいですね」

 この笑顔と心配りで、惠美子さんは恵農場のトップセールスマン。販路を広げ、いまでは宮崎市内のスーパーでも恵農場の卵やお米を入手できるようになりました。

 

【この卵のポテンシャルを広く伝えたい】

「ニワトリが卵を産むときは、少しお尻を下げて、ニワトリなりに卵が割れないように配慮して産む。せっかく産んだ卵。大事にしてあげなきゃね」
 と、惠美子さん。

 ニワトリにも人と同じように、子を大事にする本能が備わっている。そう思うと、毎日せっせと卵を産むニワトリが健気に思えます。人のために尽くしてくれるありがたい存在です。

 

 息子の一也さんは、大学を卒業後、横浜で大手食品メーカーの営業をしていた経験の持ち主です。若い視点から、「高崎のめぐみ」とスイーツとのコラボを模索。以前、ご紹介した「ケーキの店Taiki」さんでも、この卵を使用しています。上質で新鮮な卵は、ケーキの生地をしっかりと膨らませ、濃厚な風味はおいしさの源になります。固いカラは、プリンの容器として再利用。都城市内のレストランでも、スイーツに「高崎のめぐみ」が使われています。

 「素材系の商品は、よさを伝えるのが難しい。だからこそ、お客様には一期一会の気持ちで、うちの魅力を伝えたいと思っています。そして、都城から九州へ、全国へ、そして世界へと販路を広げて、よさを実感してほしいですね」

 親子3人で卵をとり、鶏糞を利用して米や野菜を育てる。川畑さんご家族の姿は、昔ながらの理想的な生活に思えます。それでいて、つくっている卵や米が世界から評価されるとなれば、こんなにカッコイイことはありません。ひたむきに、仕事と向き合う恵農場の未来を応援しています。

 

〈編集部コメント〉

「今日産んだ」という卵をいただいて、早速、家で卵かけご飯にしました。もちろん、お米も川畑さんがつくった「自然米」。卵を割ると黄身がこんもり盛り上がり、白身はキュッと締まった感じ。色も鮮やかで、いつもの卵とは全然違います。お米もつやつや。そのハーモニーは、文句なしのおいしさです。シンプルなのに、この贅沢感と満足感。日本の食の豊かさを感じました。

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