兄は酪農、弟は加工。二人三脚こそ最大の強み。歩みを止めない「中西牧場」。|宮崎県都城市ふるさと納税特設サイト

兄は酪農、弟は加工。二人三脚こそ最大の強み。歩みを止めない「中西牧場」。

 霧島山麓、田園風景が広がる山之口町にある「中西牧場」。20数年前より乳製品の開発・製造をスタートし、酪農家としての可能性を広げてきました。なかでも、中西牧場の代名詞とも言える製品が「甘乳蘇(かんにゅうそ)」です。「甘乳蘇っていったい何?」。そんな素朴な疑問とともに牧場を訪ね、製品づくりへの思いやこだわりを中西朋晃さんに伺いました。

 

両親が築き上げたものを、兄弟二人で継承

 朋晃さんの祖父である初代の中西渚さんが、昭和28年に1頭のホルスタインから始め、二代目の中西廣さん・六子さんご夫妻が盛り立ててきた中西牧場。現在は代替わりの時期を見据え、数年前よりふたりの息子さんが協力しながら牧場を運営しています。「両親のサポートを受けながら、兄が酪農を、私が乳製品の加工を担当しています」と、次男の朋晃さん。朋晃さんは東京農業大学で畜産を学んだのち、約10年前に都城へUターン。兄・基博さんに続いて、家業を手伝い始めました。
「兄が先に家業の手伝いを始めていたこともあり、この道に進むことはごくごく自然でした。兄の酪農に対する熱心な姿勢も見ていましたし、自分も頑張らないと、と」。ここから、中西牧場の次章が始まりました。

 

日本古代のチーズ「甘乳蘇」づくりに着手

 中西牧場の代表的な商品「甘乳蘇」。そもそも甘乳蘇とは、中西牧場独自の名称で、その原型は奈良・平安時代の貴族・高級官僚が、美容健康食や薬、お供物として珍重していた古代の乳製品「蘇」。濃縮された牛乳の旨みとほのかな甘さ。まるでクセのないチーズのような風味と舌触りが特徴です。
 今から遡ること20数年。「蘇」を紹介する新聞記事を読んだ廣さん・六子さんご夫妻が感銘を受け、試作を作ったことから「甘乳蘇」の製造が始まりました。「当時は、生乳需給の不均衡などを背景に、生乳の生産調整が行われていた時期です。乳牛は飼養を制限され、大切な牛乳は処分される…。とても辛い時期だったと聞いています。そんな中、両親は試作をしながら情報を集めていると、奈良県に同じような思いで乳製品の製造を行っている方がいることを知ります。そこで、両親は奈良県へ向かい、何度も指導をいただいたのちに、宮崎の「蘇」をつくることを了承いただいて商品化しました」。
 作り方を教わり、都城へ戻ったご夫妻。実際に作り始めると、乳質はもとより、つくった日の気候によっても、甘乳蘇の仕上がりが微妙に変化することに気づきます。「ひたすら試作を繰り返す日々だったそうです。でも、私が加工業務を受け継いだ今も、それは続いています。牛乳の成分は季節のほか、乳牛のエサの種類、体調によっても大きく変化するんです。甘乳蘇は朝搾った牛乳をただひたすら8時間火にかけた単純なもの。ただし、材料もつくり方もシンプルがゆえに、その日の湿度や気温などを見ながら、火加減や時間をコントロールする“勘”が最大の鍵になります。これが本当に難しいんです(笑)」。

 

分業制により、牛乳と甘乳蘇の質が向上

 甘乳蘇が誕生して、約20年。朋晃さんが幼いころ食べていた記憶の中の甘乳蘇と、現在ご自身で作った甘乳蘇を食べ比べると、「年々美味しくなっていると思います」と朋晃さん。その理由は「兄が酪農、私が加工に専念したこと」にあるのだとか。以前は、ご両親が酪農と加工の両方を手がけていたものを、約10年前より分業制にすることで、専門性が高まり、必然的に質も上がったそうです。「現在、乳牛30頭、子牛が約10頭います。兄は牛の体調や季節に合わせて、自家製の飼料を中心にエサを与えるほか、牛すべてに名前を付けて可愛がっています。名前はキャサリンとか(笑)」。
 一頭一頭にきちんと愛情を注ぐことも、中西牧場の牛乳がおいしい秘密かもしれません。

 

近い将来、新たな乳製品の開発にも挑戦!

 ふるさと納税の返礼品でも人気の高いアイスクリームには、全種類に甘乳蘇を使用。独特のコクと香ばしさを生み出しています。手間を惜しまず丹精込めて作られた甘乳蘇だからこそのおいしさです。「全国にも数軒、蘇を作っているところがありますが、うちの甘乳蘇の特徴は、“コクがあるのにあっさり”。両親がつくったベースの味わいに、私が求める“香ばしさ”を加えた甘乳蘇が理想です。今後は、両親が築き上げてきた味と思いをしっかりと継承し、より多くの方に甘乳蘇のおいしさを知っていただきたいと思っています」。
 近々、加工場を増設し、「新たな乳製品の開発も進めていきたい」と語る朋晃さん。兄弟で手と手を取り、都城の次代の酪農を牽引していく未来が見えます。

 

 

<編集部コメント>

おだやかな語り口調でインタビューに応えてくださった中西朋晃さん。お兄さんのことを誇らしげに語る姿からは想像できませんでしたが、実は学生時代は兄弟二人仲が悪かったそう(笑)。しかし、お互い社会に出て家業をともに手伝ううちに、改めて互いの存在の大切さに気づいたそうです。手を取り合い、酪農の未来を拓くお二人の姿に、「都城の酪農は安泰!」と感じました。(N.N)

 


乳牛用のサイレージ(飼料)は半分以上が自家製。時期や体調などを見ながら飼料を与えることで、乳質も格段によくなるそうです

 


煮詰め、成形、包装…と、甘乳蘇はすべて手作業。牛乳50kgを煮詰めることで1/10までの量になり、成形できるまでの状態に

 


固めて型抜きしたのち、冷却して完成。無添加、無調味。牛乳本来の甘さが鼻に抜けます。薄くスライスしてそのまま、お酒のおつまみや、お茶請けにおすすめ。「道の駅 都城」などで購入可能です

 


「道の駅 都城」では、甘乳蘇を使ったソフトクリームも販売。濃厚なミルク味の中に、香ばしさと深いコクが感じられます

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