血統にこだわる一貫生産で、都城一の宮崎牛を育てる「桜花牧場」|宮崎県都城市ふるさと納税特設サイト

血統にこだわる一貫生産で、都城一の宮崎牛を育てる「桜花牧場」

 一代で、しかも39歳という若さで、こんなに大きな牧場を経営するその男気に、驚かされました。代表の乙守孝志さんがこの世界に飛び込んだのは、24歳のとき。畜産経験ゼロにして、いきなり50頭の牛を飼育しはじめました。その根幹には、
「男に生まれたからには、人生をかけて何かをまっとうしたい」
という強い気持ちがありました。それにしても、度胸がある。その決断に、興味をひかれます。

「命を預かる仕事ですからね、牛の頭数に関係なく、休みはありません。どの道、毎日仕事するのなら、頭数を増やしたほうがいい。そう思い、29歳のときには、いまの規模にしました」
 そう語る乙守さんに牧場を案内してもらいながら、その想いをお聞きしました。

  

【繁殖から肥育までの一貫生産で、肉質を研究する】

 現在、2カ所の牧場で、550頭を飼育。畜産をはじめて、わずか5年でこの規模を実現したというから、その経営手腕には感服させられます。
「畜産業界も高齢化がすすみ、新規参入しやすい環境がありました。しかも若くて勢いがあったし、畜産のことは何も知りませんでしたからね。怖いもの知らずで、どんどん攻められた。むしろ、いまのほうが怖さを感じますよ」

 

 白い屋根に覆われた牛舎内はとても明るく、整然と片付けられています。いやな臭いもまったくありません。牛の姿がみえなければ、そこが牧場だとは気づかないほど、静かで清潔です。そんな環境のせいか、牛の表情は穏やかで、みんなおとなしい。くるくるとした大きな目で、私たちをじっとみつめてきます。

 桜花牧場では、繁殖から出産、さらに肥育まで、一貫生産しています。こうしたスタイルの牧場は、都城では数少ないとか。生まれる瞬間から出荷のときまで、一頭一頭に愛情をかけ丁寧に育てています。牛たちの人懐っこい瞳のワケは、ここにあるようです。

  

【勉強しながら試行錯誤を繰り返し、いい肉を求める】

 一見、順風満帆にみえますが、ここに至るまでは苦労の連続でした。設備投資に牛の購入、毎日の飼料代。経営的に、厳しい時間が長くつづいたといいます。加えて、体力勝負の仕事。800キロから900キロにもおよぶ大きな牛が相手なだけに、危険も多く、休みもとれない。しかも初心者からのスタート。やるべきことは山積みでした。しかし、楽しかったといいます。乙守さんは、こう振り返ります。

「いい牛を育てる。その目標に向かって勉強していく毎日は、充実感がありました。一つずつ課題をクリアしていく達成感が心地よかった。それまでの自分は、ラクなほうに逃げる生き方をしていたから、今度こそは逃げないと覚悟を決めたんです」

 その間、宮崎県では口蹄疫がありました。この地域は、殺処分は免れたものの、その後の風評被害に苦しめられました。そんな厳しい状況のなかでも、周辺の生産農家さんたちは乙守さんをかわいがってくれたといいます。さまざまなアドバイスを受けながら、目の前の仕事に打ち込む毎日。苦しい時間を経て、少しずつ、乙守さんの努力は花開きはじめます。

 

【畜産王国・都城で、1位の評価を獲得】

 こうして育てられた桜花牧場の肉牛は、100%が宮崎牛。その評価は高く、JA都城管内では1位を獲得。県内でも2位という好評価を得ています。

 宮崎牛の特長は、サシにあります。エサが影響するため、農家によってサシの入り方が異なり、肉質にも違いがあります。桜花牧場の牛肉にも美しいサシが入っていますが、脂が良質なためにさっぱりとしているとか。食べ過ぎても、まったく胃もたれしないという評価の声が多く届きます。

 

 いい肉牛が育つ理由の一つに、この地域特有の水である霧島裂罅水の存在があります。霧島山脈の懐に抱かれる都城ならではの豊かな水が、肉質に好影響を与えているのです。

 

 そしてもう一つは、血統です。この母牛に、どの種牛をかけあわせると、どんな子牛になるのか。30カ月後の姿を想像しながら、親牛の組み合わせを決めるといいます。試しては検証の繰り返しで、これまで繁殖をすすめてきました。
「エサも血統も、勉強あるのみ。一貫生産だから、検証結果がはっきりわかる。すべてデータに残して役立てていますが、ゴールはないと感じています」

 

【作業の効率化を図り、畜産の新時代をつくる】

  子牛を見せていただきました。成牛とは対照的に、細くて弱々しい。守ってあげたいかわいさです。流通管理のシステムであるトレーサビリティのため、生まれてすぐ耳に番号タグがつけられます。子牛は、母牛と2週間を過ごした後、子牛専用の牛舎で、人工保育。たっぷりの愛情をかけて育てられます。

 

 取材をしていて不思議に思ったことがありました。牛が550頭もいるというのに、牛舎はきれい。それなのに、働く人はほとんどいない。これは、どういうことでしょう。

 

 その答えは、目の前を走っていった車にありました。作業効率を考え、牛舎の掃除やエサやりには、作業車を使っているといいます。そのため、牛舎の建設段階から導線を考え、車が入れるように通路の幅を広くとるなど、効率化のための対策がとられています。

  少しの工夫で重労働も働きやすく、効率的になり、スタッフの笑顔が増える。ここで働くみなさん、本当にいい表情をされています。畜産経験がなかった乙守さんだからこそ、業界の常識にとらわれない発想ができたのかもしれません。新しい風は、こうしてもたらされるのだと感じました。

 「将来は放牧をして、子どもたちが遊びに来られるような空間をつくりたい。都城は遊ぶ場所が少ないですからね」
 ゼロからはじめて、自分のイメージを形にしてきた乙守さん。畜産業界の先輩たちから得た助言や情報を真剣に受け止め、自分のなかで消化し、新しいスタイルをつくってきた。その姿が理解され、多くの協力を得ているのだと思います。若き経営者の未来が、本当に楽しみです。

 

〈編集部コメント〉

男気あふれる乙守さんとは対照的に、牧場名は美しくしなやか。輸出にも備えて、日本らしく意味のある名前をつけたといいます。現在では、ヨーロッパにも輸出。アジアにも販路を広げる計画があるそうです。すべてが計画的で、スマート。とにかくかっこいい乙守さんの背中を追う若いスタッフさんたちも魅力的でした。

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