宮崎県外にも飛び回って宮崎茶をPR。問屋としてお茶の安定供給を図る「香清園大寺茶舗」|宮崎県都城市ふるさと納税特設サイト

宮崎県外にも飛び回って宮崎茶をPR。問屋としてお茶の安定供給を図る「香清園大寺茶舗」

 宮崎県は、お茶の生産量で全国4位の実績を誇ります。なかでも都城市は、古くからお茶の栽培が盛んな地域。都城盆地は、茶木が好む霧を生み、良質の茶葉を育てます。そのため茶畑も多く、お茶どころとして知られています。

 こうしてつくられた都城のお茶を宮崎県のブランドとして守り、より多くの人々に味わってもらおうと尽力しているのが、「香清園大寺茶舗」の大寺裕史さんです。奥様と二人三脚で30年にわたり、お茶の卸業に携わってこられました。

 

【北海道やアメリカでの酪農経験から一転、お茶の世界へ】

 早速、奥様がいれてくれたお茶をごちそうになりました。やっぱり、お茶屋さんのお茶は、おいしい。甘みと渋みのバランスが絶妙です。

 都城育ちの大寺さんですが、お茶の世界に入る前は、北海道で酪農の勉強をしていたときいて驚きました。

「若いころは、北海道の短大で酪農を学んでいました。卒業後は、アメリカのウィスコンシン州で酪農の仕事をしていました。酪農は朝が早いですからね。マイナス20度の世界ですよ。ダイヤモンドダストが美しかった。そんな生活をしていたのですが、24歳で帰国しました」

 酪農からお茶へ。あまりに大きな転身です。そのきっかけは何だったのでしょう。

「都城に帰ってきて、茶市場でバイトをしたのがきっかけですね。入札の現場を見ているうちに、茶葉の目利きができるようになりました」

 

  こうして、お茶業界に飛び込んだ大寺さん。生産者と消費者の架け橋となる卸売業をはじめるようになりました。そしていまでは、宮崎県茶協同組合の理事長を数期にわたって努め、宮崎茶の普及に貢献しています。

 

【アンテナを磨いて情報を集め、問屋として信頼を得る】

「卸売で一番大切なのは、相場観です」

 大寺さんは、そう断言します。生産者から「荒茶」と呼ばれる状態の茶葉を買い、小売専門業社に販売する。それが、卸の仕事です。大寺さんのような卸売業の方たちのおかげで、私たちは質、価格ともに安定したお茶を買うことができます。

 お茶は、見た目、水色(すいしょく)、味、この3点で善し悪しを判断します。宮崎茶は毎年、一番茶、いわゆる新茶の収穫量がもっとも多く、良質で、価格も高い。この新茶をどれくらいの量、いくらで買うのか。長年の経験値がモノをいいます。

 

 特に宮崎茶は、鹿児島県の相場に左右されるため、鹿児島県の状況に敏感でいなければなりません。
「アンテナを張って、いろいろなところから情報を入手しています。同業者との情報交換だけでなく、生産者と信頼関係を築くことも重要です。お茶農家のご苦労は大変なもの。報いることができるようにしたいものです」

 茶葉を買うときは相場観が大切ですが、売るときには必要なのは「交渉力」だといいます。

 ここでも重要になるのが、人間関係です。日々の信頼の積み重ねが、いまの仕事につながっています。仕事をはじめた当初は、売り先を見つけることに苦心されましたが、業者としてではなく、人としての信頼を積み重ねることを大事にしてきたと話してくださいました。

 

【子どもを仲介役に、家庭でお茶を楽しんでほしい】

 地産地消は重要なことですが、それだけでは宮崎茶の未来は生み出せません。宮崎茶を広く知ってもらうため、またお茶の安定供給のため、大寺さんが理事長を努める宮崎県茶協同組合では、九州各県で販売会をおこなっています。

 加えて、京都は年に5回、静岡には年に1回、販売会を開催。こうした機会をとおして、得意先のルートを広げ、茶葉を買ったり、売ったりしながら、信頼関係を築いているのだといいます。土地が違えば、人の気質も、相場観も違うようで、交渉術も異なるといいます。卸の仕事は、なかなか奥が深いものです。

 「いろんな土地でお茶の売買をしていますが、最近では急須でお茶をいれる家庭が少ないため、お茶の普及にも力を入れる必要があると思っています。その点、『T-1グランプリ』は素晴らしい。子どもたちがお茶の知識や技術を競う大会、ご存知ですか? ここ数年、このイベントで審査員をしています。手順どおりにお茶をいれる実技があったり、筆記テストがあったり。なかには、驚くほどにお茶に詳しい子もいますよ。子どものころからお茶の楽しみを教えれば、大きな普及につながりますね」

 

(「みやざき茶推進会議」のFacebookより転載)
https://www.facebook.com/MiyazakiCha/photos/a.258367487654189.1073741828.101887506635522/771881272969472/?type=3&theater

 

「T-1」グランプリとは、小学3年生から6年生を対象に、日本茶のチャンピオンを決める大会のこと。いまでは全国各地でも開催され、参加者も年々増えるなど盛り上がりを見せていますが、ここ都城が発祥です。

 こうした大会をとおして、子どもたちから家庭に、お茶のある生活を提案してほしい。 そんな“逆転の発想”に、感服しました。親世代が日本茶に親しんでいなくても、子どもがお茶をいれてくれるのであれば、家族みんなで楽しめるはず。お茶の未来を拓く斬新なイベントです。

 

【奥様と二人で事業をつづけて30年】

 「結婚した翌年に独立しましたから、妻は心配したと思いますが、よくついてきてくれました。感謝しています。普段はこんなこと言いませんけどね」
と笑う大寺さん。

 卸の仕事は出張が多く、結婚当初から留守が多かったそうですが、3人のお子さんもそれぞれ独立し、いまでも奥様と二人で仕事をつづけています。

 そんな大寺さんの楽しみは、年に1度、奥様と娘さんの3人で旅行に行くこと。最近は、和歌山県のアドベンチャーワールドで、パンダを見てきたそうです。

 「昔は、お茶1俵が40キロで、それを抱えていましたが、いまは1俵30キロにしてもキツイ。体力勝負の仕事ですが、体がつづく限り仕事をしていきたい。生産、流通、市場の循環がよくなって、業界全体がよくなればいいな、と思います」

 

 誠実な笑顔の大寺さんと、行き届いた心配りでおもてなしくださった奥様。お二人が刻んでこられた30年という時間の積み重ねを少しだけかいま見せていただきました。

 

〈編集部コメント〉

人生って不思議なもんだなぁと思います。酪農からお茶の卸業へ、大きく人生の舵を切った大寺さん。そこで才覚を発揮し、誠実な人間性も加わって、事業をつづけてこられました。そこにはいつもご家族のサポートがあったのだと感じました。一生懸命に打ち込めば、導かれるように道は拓けるものなのだと、私自身、とっても励まされました。

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