山を切り拓き、幻の地鶏を復活!「ぶり鶏の中尾」|宮崎県都城市ふるさと納税特設サイト

山を切り拓き、幻の地鶏を復活!「ぶり鶏の中尾」

農家がハレの日や人が集まる日に、庭先で育てた鶏でお客様をもてなすことは、ひと昔前まで普通の光景でした。そんな昔ながらの地鶏の美味しさを再現したいと養鶏を始めたのが「ぶり鶏の中尾」の中尾勇一さん。ブロイラーに比べると飼育に時間も手間暇もかかるため、徐々に生産者がいなくなってしまった「ぶり鶏」でしたが、中尾さんは情熱と愛情をもって幻の地鶏を復活。わずか20羽からスタートした養鶏(しかも趣味で)も、今では4000羽を超える規模となりました。そんな中尾さんを支え続けてきたのが奥様の映子さん。ご夫婦が二人三脚で歩いた日々、その歩みを伺いました。

 

趣味で始めた養鶏。
車庫飼いから
山を切り拓くまでに

 「田舎の庭先にいた地鶏の味が忘れられない、と主人が雛を買ってきたのがすべてのはじまりでした」と中尾映子さん。約15年前、テレビ番組で地鶏の雛が売られているのを見たご主人が20羽の雛を購入。あくまで趣味の一環として、当時営んでいた建設会社の車庫で飼い始めたのがこの店の原点でした。「育てた鶏を社員や知人にふるまったら“これは美味しい!”とみんなが喜んでくれて。欲しいと言う人も増えたので、それならと育てているうちに、あっという間に250羽になったんです。もう車庫で飼うのは限界!と、農家だった実家に鶏たちを移動したんですが、近隣の方から“鳴き声がうるさい!”と苦情がきてしまって…。ちょうどその頃、 “山を自由に使っていいよ”と言ってくださる方がいたので、そこに移すことにしたんです」。しかし、その山には道路もなく、杉が生い茂る手付かずの状態。中尾さんご夫妻は重機を使って道路を切り開き、木を切って平地をつくるなどし(さすが建設会社!)、約1年をかけて理想の養鶏場を完成させました。

 

卵が余る、鶏肉が足りない…
試行錯誤の日々

 建設業と養鶏業の二足のわらじだった中尾さんご夫妻ですが、徐々に養鶏業1本に絞ることに。「当初、私は鶏を育てたこともなかったし、大変なのはわかっていたので養鶏業には大反対だったんです。でも、主人は本当に凝り性だし、愛情深い人。手塩にかけて鶏を育てているのを知るうちに、私もがんばろう!という気持ちになりました。でも、最初の頃は“生産管理”がまったくできなくて…。事務所が余った玉子でいっぱいになることもありました。知り合いに配っても配っても、全然なくならなくて…。逆に、年末に鶏肉がたくさん売れてしまったために、年明け2月には売る鶏がなくなってしまい、開店休業状態が続いたり…。本当に色々ありました」。開業当時はいつ、どれくらいの量が必要になるかなどわからず、手探りの日々。しかし、そんな中、映子さんは「大切に育てた鶏を無駄にしたくない」との思いから、鶏は炭火焼に、卵は煮卵にして真空パックにして販売するなど加工品を開発。道の駅などでも人気商品となっていきました。

 

土を踏み、青草を頬張る
幸せな環境で育つ“ぶり鶏”

 夫婦二人三脚で築いた養鶏場には、今日も元気に鶏たちが走り回っています。「地面を走らせて、放し飼いにしていますので、自然と筋肉がつき、美味しくなるんですよ。鶏にとってストレスがない環境で育てることが一番なんです」。通常ブロイラーだと50日程度で出荷されることが多いところ、「ぶり鶏」は180日かけて飼育。美しい自然の中でゆったりと元気に育った「ぶり鶏」は、肉質が柔らかく、噛めば噛むほど旨味が感じられます。「やっぱり愛情が美味しさを育むのだと思います。毎日鶏たちに接しているだけあって、主人は“お前は具合が悪そうやね”と、鶏の体調がわかるらしいんです。その優しさは鶏たちにも伝わってるみたいで、仲間外れにされた鶏が翌朝、主人のところにやってきて、後ろに隠れて甘えてきたりするらしいんです…、愛情持って接していたら、心が通じ合うんでしょうね。私もお肉を加工するときは“美味しく食べてもらいなさいよ〜”と声をかけています」。

 

朝挽きの新鮮な鶏肉を
お店で味わえる

 精肉店「ぶり鶏の中尾」の隣には食事処「なかお亭」があり、朝挽きの新鮮な「ぶり鶏」をタタキや炭火焼などで味わえます(2〜3日前までに予約・コース3500円)。「タタキには脂がのった雌を使います。ムネ肉とモモ肉の両方をお出ししますが、ムネ肉もとってもジューシーで美味しいんですよ。また、シメには鶏ガラを5〜6時間炊いた鶏出汁を使ったお蕎麦を出しています。こちらも好評です」。
 また、少しでも世の中の役に立ちたいという想いで行なっているのが障害者雇用。「3〜4年前くらいからはじめて、まだ、週1回くらいの頻度なのですが、加工品の製造を手伝ってもらっています。微力でも社会のお役に立てたらと」と映子さん。優しさと愛情に溢れた中尾さんご夫妻。おふたりを知ると、より一層「ぶり鶏」が滋味深く、美味しく感じられます。

 

 

<編集部コメント>

広々とした養鶏場の近くには野良猫たちもいるそう。しかし、いつも出迎えや見送りをするくらいご主人のことが大好きで、決して鶏たちを襲ったりしないそう。奥様曰く「主人は子どもから高齢者、動物たちに至るまで優しくて、種を超えて誰とでも仲良くなれる。天性のものでしょうねー」。その言葉からはご夫婦の仲の良さが伝わってきました。微笑ましく、うらやましい限りです!(N)

 


赤いシェードの場所が精肉店。タタキなども販売しています。右手には「なかお亭」も

 


ふるさと納税の返礼品となっている炭火焼と卵のセット

 


身がしっかりと赤く、旨味たっぷりの「ぶり鶏」。東京の宮崎料理店にも卸しているそう

 


養鶏場を造る際は、奥様も山で杉の皮を剥ぐなどの作業に参加し、ご主人をサポート!

 


「なかお亭」の店内。窓の外にはのどかな田園風景が広がっています

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